夕刻に……

Posted by 松長良樹 on 24.2010 2 comments 0 trackback
螟墓坩繧・1_convert_20101124225615

 夕刻になんとなく奇妙な気分がした。
 そして僕は事もあろうに、家に帰るや否や、妻にこう言ったのだ。
「つかぬ事を訊くが君はまさか、僕が松長良樹だと思っているんじゃないだろうね」
 妻は、はっ? という顔をしたがしばらく考え、こう僕に質問してきた。
「あなたこそ、あたしがまさか松長はるみだと思っているんじゃないでしょうね?」
 僕は危うく飲みかけのジュースのコップを落としてしまうところだった。
 
 僕らはしばらくまったく会話を交わさなかった。
 ――凍ったような時間の中で僕らは黙ってテレビドラマを見ていた。

 そして妻がぽつりとこう言った。
「もうあたしたち人間のふりをしなくていいんじゃない? だってもう人間なんて地球に一人しか残ってないんだから」
「そうだね。でも、ちょっとも気になるなあ。その一人って誰?」
「これを読んでる読者よ」

   *   *

 夕暮れのことを人は古来よりこう呼んだ。
 逢う魔が時(おうまがとき)あるいは大禍時(おうまがどき)
 読んで字の如く、逢魔時は何やら妖怪、幽霊など怪しいものに出会いそうな時間という意味であり、大禍時(おうまがどき)は著しく不吉な時間という意味なのである。
 また黄昏時(たそがれどき)とも言い、現在の18時頃を指す。黄昏時は黄が太陽を表し、昏が暗いを意味している。「おうこん」や「きこん」とは読まないのは、誰彼時とも表記し、「誰そ、彼」のことであり、「そこにいる彼は誰だろう。良く分からない」といった意味を秘めているのである。

 ――闇の世界に住む魑魅魍魎は、この時間帯を狙ってこの世界に実体化しようと企てているのだ。

              おしまい?
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夕暮れ時の哲学ってのもありますね。
夕方になると、気持ちがだんだん内向きになって
哲学的なことを考えたくなるってことらしいんですけど
今回の作品は、まさにそんな感じですねえ。
え? じゃあ、ボクも地球人のフリしなくてもいいってことですね?(笑)
2010.11.25 19:41 | URL | ヴァッキーノ #UXr/yv2Y [edit]
ヴァッキーノさん、コメントありがとうございます。

まさに Twilight Zone ですな。
実は、この話は星新一の影響をもろに受けています。
氏の作品に全人類が吸血鬼に既になっていて
最後の一人にみんな遠慮して手が出せないという傑作があります。
2010.11.25 22:39 | URL | 松長良樹 #- [edit]


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