狸と狐の戦い

Posted by 松長良樹 on 25.2010 2 comments 0 trackback
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 バサッと音がして森から原っぱに狐が躍り出た。
 狐は独り言にしてはかなり大きな声で言った。
「この森広しといえども、本当に化ける事が出来るのはこの俺だけだろうな。猫や蛇なんかも化けるらしいがとても俺の比じゃない!」
 明らかな挑発だった。その声を遠くで狸は聞いたが、最初ぼんやりとしていた。しかし事の意味がはっきりと判るとただならぬ顔になった。プライドが傷ついたのだ。
 狸は猛ダッシュをして声のした場所まで息を切って駆けつけた……。
「ちょっと待った!なんで狸のおいらを無視するんだ。化ける事に関してはオーソリティだし誰にも引けはとらないよ」
(なんだお前)と言う顔を狐がした。さげすみの色が瞳に混じっていた。
「なんだ。狸か。好かんな。どんくさい」
「な、なんだとこのペテン師。聞き捨てなら無いね。化けるのはおいらが上だ。さっきの言葉を撤回しろ!」
 ちょっと不思議そうな顔を狐がしたが、眼に火花をちらして二匹の動物が向かい合った。お互い相手が最強のライバルだと意識している。
「じゃあ、この際決着をつけようじゃないか。化け比べで勝負しろ」
 狐が言う。
「臨むところだ」
 狸も返す。
「ちょっと待て、これは決闘じゃない。化け合いだからジャッジがいる。森の長老の大陸亀(オオリクガメ)さんに審判を頼もうじゃないか」
「いいだろう、大陸亀さんはもう百年もこの森に生きて、色々な化け方を見聞きされている、異存は無い。長老に判断をしていただこう」
 「わかった。では早速、大陸亀さんをここに呼ぼう」
 すると突然、茂みの中からぬーっと大きな亀の首が伸びた。年輪を重ねた深い皺が眼の周りと首にあった。まるでガラパゴスに生育しているような巨大ガメの登場である。
 「わしならさっきからここにおるぞ。一部始終は聞かせてもらった」
 二匹が驚いて少し後づさりする。大陸亀が野太い声で言った。
「ジャッジは引き受けよう。こうしよう。化けるのは三回までと決めよう。ポイント制じゃ、一試合勝者に10ポイントだ。総合ポイントで勝敗を決する」
「おおーっ」
 二匹が同時に答えた。
「では、一回戦じゃ。両者とも、とにかく大きい物。巨大な物に化けてみよ」
 大陸亀がそう言った途端、狐の姿がふっと見えなくなった。暫らくして轟音と共に地響きがしてきた。森の彼方に見える火山が噴火しているのだ。
 上の方から声がする。
「ははははっ、どうです。俺は火山に化けた。噴火しているんだ!火傷しないように注意することだ!」
 狐の声だ。狸の額に汗が光った。今度は狸が姿を消す。
 天から狸の声がする。
「どうです。うわっはっはっはっ」
 大陸亀と元に戻った狐が空を見上げると太陽が二つある。
「どうですか、おいら太陽に化けましたよ」
「凄い」
 大陸亀が驚嘆した。二回戦が始まる。
「今度は、美しいものに化けてみよ」
 大陸亀が言い終わらないうちに、むこうから白馬がやって来た。
 今度は狸が先に化けたのだ。
 見ると背に羽根がある。空高く駆ける美しいペガサスだ―― 見とれてしまう。
 今度はむこうからクレオパトラのような妖艶な女性が歩いて来る。まさに絶世の美女である。もちろん狐だ。
 甲乙つけがたく、勝負は三回戦に突入した。
「今度は、世界で一番おいしいものに化けてみよ」
 二匹が一瞬顔を見合わせたが、狸はフォアグラのソテー。狐はロシア産のキャビアに化けた。
「うーん」
 大陸亀はヨダレをたらし、溜め息をついた。そして大きな口をあけてそれらを一飲みにしてしまった。
 二匹はたちまち大陸亀の胃袋で消化されてしまった。

 草むらに忍んでいて、狐を見かけると同時に大陸亀は狐の声色を使った。
 二匹がライバルと知る大陸亀は周到な計画を実行したのだ。

 大陸亀は暫らく満足そうに眼を閉じて悦に入っていたが、瞬く間に大鷲に変身し、大空の彼方に飛び去って行った……。

                      おしまい。
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世の中、キツネとタヌキばっかりですねえ。
亀と鷹というこのま逆の取り合わせが意表をつきました。
さて、赤いきつねと緑のたぬき、どっち食べようかなあ。。。
2010.11.27 05:53 | URL | ヴァッキーノ #UXr/yv2Y [edit]
ヴァッキーノさん。コメントありがとうございます。
僕は赤いきつねのほうが好きです!
2010.11.27 21:44 | URL | 松長良樹 #- [edit]


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