願い事

Posted by 松長良樹 on 11.2010 0 comments 0 trackback
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 俺は怒っている。普段温厚な俺がなぜ怒っているかというと、それなりの訳は勿論ある。天使のせいなのだ。まあ聞いて欲しい。訳を聞けばあなただって俺に同情してくれるはずだ。 
 あるとき天使が俺の前に現れた。全く予期してなかったから驚いたさ。どうして天使かすぐに判かったかというと頭の上に金色の輪があったし、背中から可愛い羽を生やし、白い衣装で上品な目鼻立ちをしていた。だから俺は彼を天使だと確信したんだ。
 天使は俺を見て可愛い声でこう言ったのさ。
「願い事を一つ叶えてあげましょう」
「……な、なんで?」
 俺は目を点にしていた。願い事というと魔人か悪魔を連想するがなんで天使なのだろう? 俺がそんなことを考えていると天使がこう説明したんだ。
「実は最近、天国は暇なのです。神様は荒んだ世の中を少しでも癒す事はできまいかとお考えになり、『願い事を復活させたらどうだ』とおっしゃられたのです。願い事を叶えることで生きる望みをなくしたような人でも再び希望を持って生きられるようになるのではとお考えになったのです」
「ほう」
「そして無作為にあなたが一人目に選ばれました。本当におめでとうございます」
 俺は半信半疑だったが、すでに脳細胞はフル回転を始めていた。
 これはもしかしてチャンスかもしれないと思ったさ。思えば俺の人生に幸運なんてほとんどなかった。社会の底辺を這いつくばって生きてきた俺は慎重に、しかも懸命に考え始めていた。
「なるほど、ちょっと待って下さいますか。考える時間を充分に与えていただきたいのですが」
 いきなり敬語になった俺が自分でもいやらしい。
「わかりました。何年でも充分お考えください」
 天使はそう言ってどこへともなく飛んでいってしまった。

 *  *

 それっきりなのだ。ああ、それっきり天使は俺の元に現れないのだ。
 まさか、まさか、まさか! まさか『ちょっと待って下さいますか。考える時間を充分与えてください』が俺の願いなんて言わせないぞ! 納得できるものか。そ、そうでしょ! まるで詐欺だ! あんまりだよ! このインチキ野郎!!

                  おしまい。
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