青い瞳のエミーナ 1

Posted by 松長良樹 on 21.2010 0 comments 0 trackback
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 高林良治という青年は酒に酔っていた。もっとも最終電車に揺られるうち大分酔いは醒めていた。学生仲間の合コンに行き、梯子をして三軒目の飲み屋を出た時には泥酔に近かったが、自宅近くの小さな駅に着いたときはかなり回復していた。といってもまだ千鳥足で歩いていた。
 ぼんやりとした虚ろな思考状態が続いている。高林はどちらかと言うと線の細い、ひょろっと背の高い大学生である。一応志望校に入学してから二年目になる。
 最近は勉強よりも遊びの方に重点がおかれていた。今回の合コンでもいい子は見つからなかった。と言うより高林の性格は彼女を作るのに不向きだった。なぜか女の子を前にすると居丈高な態度を取ってしまう。
 好みの女の子がいても最初から説教口調だったり、命令口調だったりしたから彼女など出来るはずもなかった。 それに彼は好きな異性の前に出ると心と裏腹な、つっけんどんな態度を取る幼稚ともいえる性癖を持ち合わせていた。
 最終電車から降りると急に気分が悪くなり吐き気を催した。駅の公衆トイレの個室に入り鍵を掛ける。胃の中の物を全部吐き出しても頭痛がして暫らくその場を動けない。やっと気分が回復して鍵を開けた頃には回りに人影が無くなっていた。
 ふらりとトイレを出ようとすると不意に白い物が眼に入った。奥の個室のドアが開いていて何かが見える。 
 無意識に通り過ぎて、なんだったのとか思う。なにか異様なものだ。思わず後戻りしてしまう。
 夢、幻の類かと思った。それは白い女体だった。個室の奥に蹲り、小刻みに身体を震わせている。
 まさかあり得ないと思った。酒の上の幻覚かと思って深呼吸をする。
 しかし、眼を擦っても頭をたたいても、そこに一糸纏わぬ女の裸身が晒されていた。心臓が急激に早鐘を打ち鳴らし、血圧が急上昇する。どうしようと思った。やばいぞと思った。事件か事故だと思った。駅長室に行こうかと思った時、高林に気付いて女がゆっくりと立ち上がった。
 その美しさ、妖艶さに高林は度肝を抜かれて後ずさりした。長い艶やかな黒髪を垂れ、やや面長の顔に妖精のような大きな瞳を煌めかせていた。釣鐘形の乳房。腰のくびれた形のいい肢体と、ほっそりとした四肢を有していた。肌は磁器のように白く、血管が透けて見える程透明感があった。
 一糸纏わぬという表現は当たっていなかった。女は細く白い首の周りに黒いチョーカーを付けていた。革製のチョーカーの前の部分に赤いルビーが光っていた。その一点の細い首輪が女の肢体をこの上も無くエロティックに官能的なものにしていた。高林は軽い目眩さえ覚えて呆然と息を呑んでその場に立ち尽くしていた。
「大丈夫ですか?……」
 高林の言葉は咄嗟に出た。頭の中はパニックに近くとてもまともな思考状態ではない。
「もちろん大丈夫です。ご主人様」
 高林はその女の台詞に尚も頭の中が混乱し、どうしたらいいのかさえ判らなくなった……。

                                   つづく。
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