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青い瞳のエミーナ 6

Posted by 松長良樹 on 27.2010 0 comments 0 trackback
 外食する事を安易に考えた高林だったが、待てよと高林の心の中でブレーキが掛かった。外に出ればエミーナを人の目に晒す事になる。
 もしエミーナを知っている人にあったらどうしよう? 
『この娘の記憶がないので僕が今まで同棲させていただいてました』
 そう答えるのか? ああ、俺はなんでこんな事をしちまったんだ。
 あの時すぐに駅員に知らせるべきだったんだ。もし警察にでも知れたら俺は逮捕されるぞ。今更ながらに後悔の念が高林を苦しめた。
「外に行きましょう」
 エミーナが微笑んで言った。その声の調子が妙におとなびていた。
 その喋り方をきいて高林の胸に疑心が沸き起こり、顔つきが変わった。
「君まさか、芝居してるんじゃないだろうね。俺をどうにかしようって魂胆じゃないだろうね。怪しいもんだ」
 突然高林が語気を荒らげていた。
「……」
「だいたい有り得ない話じゃないか。君みたいな美人が俺みたいな貧乏学生のところに来るなんて。何か理由があるんだろ。言ってみろ! 親の財産が目当てか。親だって資産家でもなんでもないぞ」
 吐き棄てるような調子だ。物も言えずエミーナの目に涙が溜まった。驚いて小刻みに細い肩が震えていた。高林がエミーナの両肩に手を掛けた。
「なあ、頼むから本当のことを言ってくれ。誰かに頼まれたのか。えっ」
 エミーナはただ泣いていた。重い鎮痛な時間だけが過ぎていった。
「あたし…… ここにいないほうがいい?」
 エミーナが泣き声で高林にそう訊いた。高林はエミーナに背を向けて胡坐をかいていた。
 エミーナがふらりと立ちあがって外に出ていった。

 暫らく時間が経った。沈黙の長い時間が過ぎていた。
 高林が急に立ちあがってエミーナの後を追った。
 何処に行ったのかわからない。エミーナが行きそうなところを探し回った。コンビニから駅まで探し回った。いない。どうしようと思った。なんだか急に心細くなっていた。
 やはり彼女には記憶がないんだ。やっぱり病気なんだ。と高林は思った。なんで彼女にあんな事を言ってしまったのか後悔した。高林も精神的に追い詰められていたのだ。罪悪感と葛藤するうち自分を正当化しようとしてあんな態度をとったのかもしれない。
 とぼとぼと途方にくれて高林は公園まで歩いた。もうおしまいだ。もう会えない。
 そう思ったとき、ブランコに若い娘が座っていた。
 エミーナだった。切なそうな顔でエミーナが高林を見た。
 高林が歩み寄った。ブランコの鎖に手をかけてしゃがみこんだ。
「ごめんな。君がきれい過ぎて、すなお過ぎて俺は…… とにかくごめん。もうあんな事は二度と言わないよ」
 高林が静かに言った。
「あたし… 行くところがない」
 ――エミーナの瞳が悲しそうだった。
「俺んとこに帰ろうな。エミーナ」
 高林の目頭が潤んでいるように見えた。エミーナがようやく微笑んで立ち上がった。
 思い切り高林がエミーナを抱きしめた。
「外食はあしたにしよう。きょうはもう遅いから」
 高林が言うとエミーナが大きく頷いた。

                           つづく

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