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青い瞳のエミーナ 7

Posted by 松長良樹 on 28.2010 0 comments 0 trackback
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 ――海面に明かりが揺れていた。
 アンティークなイルミネーションの光るカフェバーだった。
 その店は海岸沿いに建てられていた。螺旋階段が海辺まで続いていた。
 壁一面大きながガラス窓だった。高林とエミーナが店に入るとウエイターが二人を席に案内した。通常の席より一段高く壁一面がガラス張りの気のきいたテーブル席だった。
 外にむかって座り港の景色が楽しめる。
 予約席の札をウエイターが外した。高林に予約をした覚えはない。
 小さな声でこのお席はキャンセルが先ほど入りましてと、ウエイターが囁くように言った。席に着く。高林は客達の視線がエミーナに集中しているのがわかった。店に入った時から感じていた。見て見ぬふりをする客。露骨に視線を釘付けにする客。口を開けそのまま口の閉じ方を忘れてしまったような男までいた。
 それほどまでにエミーナは妖艶であった。高林はエミーナの為にバイト代を貯めてドレスを買った。美容室にも行かせた。ドレスはネットショップの中古品ではあった。黒一色のロングドレスはエミーナを綺麗なレディに変えていた。貴族の気品と高級娼婦のもつ色香を併せ持つようであった。
 ローストビーフをほおばりながら高林が言った。
「君と会って2ヶ月になるね」
「はい。2ヶ月」
「どうして僕となんかといてくれるの?」
 しまったと思った。また質問をしてしまったと思った。
「それが運命です」
 ぽつりとエミーナが言った。しかしその言葉の奥に仕方なくというニュアンスが含まれていた。聞き捨てならなかった。
「どうして運命なのさ」
 高林が問い正した。みるみるエミーナの瞳に困惑が湧き上がった。
「……」
 
 しかし、こんな美しい娘とディナーを洒落込むなんて夢のようであった。この二か月が夢でない事を確かめるようにじっと彼はエミーナを見つめた。

 その時、夢を破るように店のドアが開いた。男が入店してきた。オールバックに黒のスーツ。赤いネクタイ。夜だというのにサングラスをしていた。
 男は店内を見回し、高林とエミーナを眼にとめると、真っ直ぐに歩み寄って 高林の横のカウンター席に座った。高林の耳元に囁くにしては大きな声で言った。
「手違いだった。これまでの事は水に流すから女を返してくれ」
 単刀直入だった。高林は何も答えなかった。なにか覚悟していたものがきたような気がした。
「なんのことですか」
 高林が言った。男には表情が無く、サングラスの下にどんな眼を隠し持つのか想像すらつかなかった……。

                                   つづく
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