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青い瞳のエミーナ 8

Posted by 松長良樹 on 29.2010 0 comments 0 trackback
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「とぼけないで欲しい。君の隣にいる女を返して欲しい」
「返してって。意味がわかりませんけど」
 平静を装ってはいたが高林は心臓に妙な圧迫感を覚えた。鼓動が早まる。
 男のしゃべり方にはあまり抑揚がなかった。張りのある声ではあったが、人間味のない冷たさを秘めていた。
「黙って引き渡せばそれで済む」
「それで済むって。こっちは済まないですよ」
 高林の冷静な心の壁に亀裂が生じた。感情が漏れ出していた。
「私はある組織の人間です。人を殺したとしても罪に問われない」
「な、なんですか。それは脅しですか」
 高林の視線が泳いだ。急に回りの世界が色彩を失ってモノクロになったような気がした。
「そんなばかな話信じませんよ。おかしいでしょ、どう言う意味ですか」
 高林が横目でエミーナを一瞥する。まったく無関心にワインを飲んでいる。
 高林に胸の内に怒りと驚きと恐怖が同時に押し寄せた。整理しがたい感情だ。
「事情を説明しても長くなるし。かえって君のマイナスになる。何も知らないほうが君の為だ」
 組織という響きは高林にとって不気味だった。(ろくな組織ではないだろう。おおかた暴力団かなにかだ)と高林は思った。
「外に出よう」
 男が言った。高林は言葉を忘れてしまったような蒼い顔をしていた。
「……」
 恐怖だった。(外に出て暗がりでぶすりという可能性もあるではないか)と高林は思った。
 高林の肘から二の腕のあたりを、サングラスの男が下から掴んだ。かなり強い握力だ。そのまま上に持ち上げようとする。高林を立たせようとする格好だ。
 高林が拒んだ。
「食事中ですよ」
 高林が不機嫌な顔を遠慮もなく浮かべた。意外に男の手から簡単に力が抜けた。立ち上がりエミーナの座る席の隣に移動をした。
 男は今度エミーナの肩に手を回した。立たせようとする。
「来なさい」
 低い声を男が出した。エミーナの眉間に皺が寄った。悲しそうで瞳だ。助けを求めるようにエミーナの冷たい指先が高林の腕に絡んだ。
「嫌がってますよ」
「いいから来なさい」
 男は命令口調だった。
「むりやりですか。警察沙汰にしますよ」
 高林が本気で言った。
「世話を焼かせますね」
 男がエミーナから離れた。また高林の横にぴったりと座り直す。途端に高林の横腹に固いものが突きつけられた。強い恐怖が高林の中に沸き起こった。腹の辺りを見る。
 黒い筒のようなものが高林の腹の押し当てられている。
「これは消音器です。勿論銃に取り付けてある。この消音器は殆ど音がしない。私は躊躇なく銃を発砲しますよ。この薄暗いムーディーな店じゃ、あなたが死んでカウンターに凭れかかったままでも暫らく誰も気付く者も無いでしょうねえ。気が付いた時にはあなたはもう冷たくなってる。そうなりたくないなら一緒に店を出て夜風の当たろうじゃありませんか」
 脅しでもはったりでも無さそうだった。ぞくりとして冷や汗が高林の額から流れた。
 まるで悪夢のような現実であった……。

                          つづく
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