長蕎麦コンテスト

Posted by 松長良樹 on 17.2016 0 comments 0 trackback
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 時は元禄元年 将軍が綱吉の時代。蕎麦が大好きな下総の大名が、とんでもない御触れをだした。
 長い蕎麦をつくる事。より長い蕎麦を打った者には褒美を与えるという、風変わりな触れ書きが高札に表示された。
 それを知った下総の庶民が、お上に聞こえないように愚痴をこぼした。
「いや、まいったねえ。いったいお上は何を考えていなさるのか、お犬様の次は長い蕎麦かよ、さっぱりわからねえ」
 町人の伊之助は大工の秀吉にそう言った。
「だけどよ、処罰はなしで、とにかく長い蕎麦を作ればご褒美だと言うんだから、蕎麦職人は喜んでいるかもしれねえなあ、伊之助」

笑顔になれる薬

Posted by 松長良樹 on 16.2016 0 comments 0 trackback
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  天才博士は誰もが笑顔をなくしかけた委縮した世界を憂いた。
 そこで誰もが笑顔になれる薬を完成させた。一日一錠で誰もが笑顔になれ、楽しい一日を過ごせる。薬はばか売れしたが、その後すぐに『偽物の笑顔の見破り方』という本がベストセラーになった。
 そこで博士は絶対見破れない笑顔になれる新薬を発明し、その薬も驚異的に売れた。
 と、今度は『新薬の笑顔の見破り方』という本が大ベストセラーになった。

 その本を買う人々の顔、それはもちろん笑顔だった。


                       END

旅は道ずれ、世は不可思議

Posted by 松長良樹 on 12.2016 0 comments 0 trackback
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 カナコは街角を曲がったとき、なにか人の行列ができているので、この近くに新装の店でもでき、安売りでもしているのかと思い、その行列に並ばないまでも様子を確かめようと思った。
 カナコはもともと好奇心が旺盛なので、その列の先頭を探したが、なかなかたどり着かない。それに雰囲気がへんなのだ。スーツケースを持つ者や、地図を持つ者、リュックや帽子の人が多い。

心の雨

Posted by 松長良樹 on 07.2016 0 comments 0 trackback
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  ――心の内側に雨が降っている。窓から見える空はこんなにも晴れているというのに。
 それというのも知ってしまったからだ。私の食事に妻の玲子が毒をもっているという恐ろしい事実を……。
 私と玲子とは歳が二回りも違う。だから玲子が私と添い遂げると言った時に一抹の不安を感じずにはいられなかった。だが私は玲子の美貌に心身とも魅了されてしまった。玲子はあなたの創作の仕事が好きだから、傍にいてあなたを支え続けたいとも言った。
 それが偽りだったなんてとても信じられない。今でも。

霧雨

Posted by 松長良樹 on 29.2016 0 comments 0 trackback
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「ねえ君、山で迷ったことないですか?」
 カウンター席で青年が傍にいる女性にそう尋ねた。その青年は室内だというのに帽子を深々と被ったままである。ところは信州、山の麓の小奇麗なカフェ。
 青年とその若い女性とは初対面で青年がグラスを持ったままで、そんな事を出し抜けに訊いたのである。
 女性の方は女友達ちと来ていたから、いくぶん心丈夫で丁寧にその質問に答えることにした。青年が見栄えのよい丹精な顔立ちをしていたからだ。

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